あおいの篤姫

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このところ毎週、テレビ視聴率のトップを維持しているのは、
NHKの大河ドラマ篤姫」ですが、僕も欠かさず見ています。
もともと歴史は得意ではなくて、篤姫って存在も知らなかったので、
番組が始まった1月、2月には、ほとんど見てはいませんでした。
たまに見ても、宮崎あおいの「姫」に違和感を覚えたほどです。

ところが3月になって、篤姫が島津の養女になるあたりから、
なぜともなく、少しずつ心惹かれて番組を見るようになりました。
篤姫という、それまで知らなかった人物にも興味を持つようになり、
幕末の家定から慶喜に至る、当時の政情にも関心が広がりました。
気が付くとそれは、あおいが演じる篤姫の心に沿うものでした。
あおいが出会うものに出会い、篤姫の心情になっていくのです。

当初はあれほど違和感を感じていた、宮崎あおいが演じる姫は、
いつのまにか見る者と一緒に成長して、本物の姫へと変身していく。
自分の中にあった既存の姫のイメージは、どうでもよくなって、
宮崎あおいこそが、本物の篤姫であると了解されていくのです。
彼女の演技はそれほどすばらしく、魅力的で、共感を誘うのです。

NHKの大河ドラマは、毎年豪華な顔ぶれなのがあたりまえで、
そうしたオールスターキャストは、あまり好きではないのですが、
今回の堺雅人による家定も、篤姫に劣らず惹かれるものがあって、
この二人の関係と、それぞれが背負っているものが関心を深めます。
また松坂慶子の幾島、稲森いずみの滝山、島津斉彬、本寿院など、
あらためて、優れた役者の魅力を感じさせてくれました。

これだけの物語は、大筋で史実だからこそ描かれたのでしょう。
そうかと言って、単なる歴史検証ものとは違う視点も見え隠れする。
あおいの篤姫は身近に心をたどれる存在となって、家定に寄り添い、
身体の関係を持たなかったかもしれない男女の、愛情まで思うのです。
この難しいテーマが、さりげない共感のうちに了解されるのです。

あおいの篤姫の表情は、薩摩で暮らしていた頃とは一変しました。
ドラマが始まって半年が過ぎて、家定の死で篤姫の半生も終わります。
この半年で、たしかに彼女の表情は大きく成長を遂げているのです。
それはあらかじめ演出された演技である以上に、彼女は実際に変容し、
そのリアルさこそが、彼女が女優として持つ才能にも思われます。
あおいの篤姫は、今や立派に「葵の篤姫」に成長したのです。


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