つゆのあとさき

北陸地方が、昨日梅雨入りをしたらしい。
と言っても、ずっと快晴だった空に雲が広がって、
雨が降ったのは、一時間にも満たない時間だったけど、
それでも農作物には、恵みの雨だったに違いない。

日本という国は、季節の巡りを生活のリズムとして、
衣食住は、そのリズムと共に成り立っている。
西欧のように、快適というものが決まっているのではなく、
巡る変化そのものを楽しむので、多様な味わいがある。

そのような味わいは、小説で学ぶことが多かったけど、
中でも永井荷風谷崎潤一郎などは絶品だった。
荷風の作に「つゆのあとさき」と言うのがあって、
これなど特別な事件など何も書かれていないのに面白い。

人間の生活は、一人では出来ないと言われるけど、
今の社会では、何でも数字や経済で表してしまうから、
人数がいくらいても、人は孤独になりがちになっている。
人格や個性としての「人間」を見失って孤独なのだ。

「数字で表されるものなんかどうでもいい」
実はそう思っているのに、そうは暮らせないと思い込む、
この思い込みを脱ぐことが出来れば、楽に暮らせる。
何のことかわからない人は、荷風か谷崎でも読めばいい。

明治以降の日本に、小説家の数は多いけど、
僕はこの二人の個性を、ずっと特別に好きでいる。
うっとうしい梅雨まで嫌いでなくなったのは、
この「つゆのあとさき」を読んでからだった。

でもその感覚を、本当に理解できるようになったのは、
もしかしたら、自然農を始めてからのことでしょう。
そうでないと、今の僕らの生活はあまりにも自然から遠く、
まるで幸せさえも、経済的な問題だと思っている。

人は、まず幸せを味わう心を身につけなければ、
いくら便利な世の中になっても、不安でしかない。
それから、心を通わせる術を身につけなければ、
溢れる情報の中で孤独に陥るしかないのです。

さあ今朝も、これから食事をして田畑に行って、
ちゅんちゅんたちと農作業を楽しみましょう!
遅れていた古代米の田植えも、あともう少しです。