~持続発展可能な未来への第一歩~

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普段はまったく縁のない、高岡青年会議所ではありますが、
不都合な真実」の翻訳者、枝廣淳子さんの講演があったので、
高岡商工ビルの会場まで行って、お話を聞いてきました。
「SOS!限界を超えた地球」がテーマになっていましたけど、
僕は副題の方が好きでしたので、それを今日の題名にしてあります。

さてこの90分間の講演は、内容が濃く、かつわかりやすく、
枝廣さんの本業である、通訳の仕事で感じ取られたことも面白い。
今回彼女の講演は、主に二つの内容を主題にして話されていましたが、
一つは、温暖化による環境悪化がいかに危機的か!ってことで、
もう一つは、その事をどう人に伝えて社会を変えていけるかの話しです。
僕は危機的な温暖化は自明のこととし、それではどうすればいいか?
自分に何ができるかを、枝廣さんの理論にしたがって考えていきます。

まず、温暖化の事実や、どうすればいいか?が伝わるようにするには、
(A)伝えようとする気持ちを、強く持っていること。
(B)伝えようとすることに、十分な内容があること。
(C)人に伝えるための、スキルを持っていること。
彼女は(A)と(B)に関しては、持っている人が多いけど、
アル・ゴアさんのように(C)のスキルを持つ人が少ないのだと言われる。
なるほど僕にしても、内容を吟味することは必須と思っていても、
まだ関心のない人にどの程度伝えられるかは、自信があるとは言えない。

そこで、彼女が紹介してくれたノウハウを整理してみると、
(1)ビジョンを描くこと(何を目指すのか、理想像を明確にする)
(2)全体像を把握すること(現状から理想まで、全体を見通すこと)
(3)行動すること(言葉や理屈でなく、具体的な行動で示す)
(4)伝え広げること(考えつく→伝える→やってみる→社会の主流)
このようなステップを踏んで進めればいいとして、さらに注意点は、
◎無意識に自動化された行動パターンを変えることの大切さを話された。

そこで普段から無意識にやっていることを、意識して変えてみる。
まず直接省エネとなる普段の生活の見直しとして。
(例)朝起きると無意識に電気をつける。
 →なぜだろうと考え、その目的を知る。
 →暗いから電気をつけると認識し、別の解決方法を考える。
 →明るければいいのだから、電気を点けずカーテンを開ける。
 ※ こうした行動によって、今ある利益を損なわずに節電ができる。
こうした行動を、まず自分でやって、電気、ガス、ガソリン消費を減らす。
それから次に、間接的に出しているCO2を減らしていく。
(例)遠距離から運ばれてくるものを控え、地産地消を進めていく。
そして最後に、行政レベルで炭素税などの導入による温暖化対策を取る。

こうした温暖化対策は、経済の停滞を招くと言う人もいるけど、
もともと今のような経済成長は、限りある地球では無理だと知ること。
世界に目を向ければ、経済成長よりも人の幸せを計る方法はたくさんあり、
たとえば、女性が担っている家事や子育ての労働で経済成長はしないけど、
これによって人は幸せを増やすことができているのだから、
人が幸せになるためには、かならずしも経済成長は必要ないとも言える。
ブータンの「国民総幸福度」のように、会社でも自治体でも家庭でも、
おカネではない「幸せ指標」は、自分たちで作れることが大切だってこと。

枝廣さんはまた、興味深い具体的な数字としてこんなことも紹介されます。
現在の人類は、毎年72億トンのCO2を排出しているけど、
地球が吸収できるのは、年に31億トンでしかないことがわかっている。
すなわち、今の状態よりも70%のCO2削減ができないと、温暖化は進む。
その70%削減された状態とは、今から45年前の日本社会に匹敵する。
その程度のCO2排出生活で納得できれば、循環社会は可能だというのです。
さらに今では格段に省エネ技術も進んでいるのですから、
実際にはもっと便利な生活も、無理なく可能になっているはずなのです。

って言うか、この40年間に日本人はいかに浪費社会を作ってしまったか!
その多くの贅沢は、本当に人を幸せにしているのかどうかも疑問なのです。
現在騒がれている温暖化は、大変な症状の一つではあるけど、
問題の根元はもっと別の所にあるので、それを見極めなければならない。
即ちそれが、「有限な地球で無限の成長を目指す限界」のことなのです!
日本政府のように、目前の問題だけをモグラ叩きしていても解決しない。
誰が悪いとか、何が悪いとか、自分や人を責めるのではなく、
システムや既成価値観が引き起こしている諸問題を「システム思考」で捉え、
このシステムを変えることを目指すことが必要だと訴えているのです。

いやあ、この講演は、なんと充実した90分間だったことか!
さらには会場からの質問に答えて話された、いくつかのポイントも、
実際に人に話すときに大切なこととして受け取ることができました。
たとえば聞く人に合わせて、理性で話すか、経済で話すか、感性で話すか、
それぞれのシチュエーションを使い分ける重要性だとか、
ただ反対のための反対しか言わない人と闘っても消耗するから放っておく。
など、現場で役立ちそうな実例も、的確で興味深かったです。


翻訳の多い枝廣さんですが、こんな興味深い本もあります。
 「なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?
  ―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方」
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4492555757?ie=UTF8&tag=isobehon-22