原発に見える「不都合な真実」

最近お会いした多くの人から受け取った、考えさせられるポイントを、
忘れないうちに、少し整理して書いておくことにしましょう。

内容のほとんどは、普段から気付いていることが多いのですが、
たとえばマスコミ報道の偏向性について、ゆみさんが話されたのは、
こんどのイラク攻撃と、昔のベトナム戦争の報道の違いでした。

実はイラク攻撃に対する抗議と反対の市民運動は、大規模なもので、
参加した人数はベトナム戦争時よりも遙かに多い百万人規模だった。
だから反対運動に参加した人たちは、広がりに自信を持っていたのに、
マスコミはそれを無視して、戦争を賛美する集会だけを報道する。
すると、直接集会に参加せずにニュースを見た人たちは誤解して、
世論は戦争を是認していると思い込まされていったのです。

それではどうして、こんなひどいことが起きてしまったのか?
答えは経済至上主義の買収によって、マスコミの系列化が進み、
テレビや新聞の経営権が、巨大企業の利益傘下に入ったことでした。
こうした事実は、ネット上でも大きな問題として取り上げられました。
それを今回の連続講演で、あらためて浮き彫りに聞いた気がします。
全米数百万人の「考えた人」による「No」はまったく報道されずに、
わずか数万人の利益優先の「Yes」だけが報道されていたのです。

この状況は、アメリカ型グローバル経済化を進める日本でも同じで、
あからさまに出てきたホリエモンを切り捨てる一方、事態は深刻です。
マスコミ各社は、いちおう反戦平和・環境保護を謳ってはいますが、
実際に報道している内容のほとんどは、政府や大企業に寄り添って、
その典型が、他国の驚異と原子力関連の報道の矛盾に現れています。
本来のジャーナリズムが言う報道の自由とは、少数意見の尊重なのに、
マスコミで、政府や大企業に不都合な意見が取り上げられることは、
911事件以降は、目に見えて少なくなってしまいました。

ともかく憲法を変えて日本の再軍備をしたい、今の自民党政権は、
イラク戦争では進んで正義の役割を担うと言い出して派兵する一方、
通常の世界観では取るに足りない、貧しい隣国からの攻撃に備えて、
その国家予算を超えるような軍事関連費を湯水のように使うのです。
実験ミサイルが数本飛んだだけで、マスコミはパニック報道です。
核実験が行われたと言って、日本の戦意高揚まで始まりました。
マスコミは自主的報道規制によって、政府を批判できませんでした。

それでも、もともといい加減な戦意高揚なので、思わぬ破綻もある。
富山県日本海に面しているので、これは一大事だとばかりに、
行政サイドで避難訓練のようなシミュレーションまで考えたのですが、
放射能のことを持ち出せば、たちまち志賀原発のことが出てくるので、
すぐにそうした訓練はうやむやになって、何も発表されませんでした。
その志賀原発で臨界事故があったと発覚してさえ、何もしません。

なにしろ富山県は、志賀原発の所有者である北陸電力の大株主なので、
風下に当たる富山県の住民の安全と安心を考えるなら、その実権を持って、
原発を作らない、永久にこれを放棄することも可能なのに、それをしない。
経済的利益に反することは、県民が滅びるまで言い出さないのか?

そうでないなら、他国からの核攻撃より遙かに現実味のある核汚染を孕む、
志賀原発の稼動を、大株主富山県はどうして止められないと言うのか?
それはひとえに政府の原子力政策があるからで、県行政は追従あるのみ、
どんな重大な事故隠しがあろうと、想定外の設計ミスがあろうと、
裁判所が住民の訴訟を受けて、運転差し止め判決を出してさえ、さらには
近隣で重大な大地震が発生して、甚大な被害が出る可能性があってさえ、
遺憾の意を表すだけで、この稼動をやめてしまおうとはしないのです。

田中優さんの話を聞けば、日本の電力は現状でさえ原発は要らないし、
このさきさまざまな省エネ開発が進めば、電力需要は減っていく。
政府と電力業会は、それでは困るから、オール電化を推奨している。
電力ピークをなだらかにする政策を採用すれば、すでに電力は過剰で、
世界的趨勢である自然エネルギーの利用が進めば、火力発電も減らせる。
こんな状況の中で、なぜ政府は危険な原子力にこだわり続けるのか?
その理由を山崎さんは、核兵器開発のインフラ整備かも知れないと言う。

この国は原子力政策一つを見ても、安心な暮らしを願う市民感情と離れ、
なにがしかの思惑がマスコミを通して押し付けられ、真実が見えない。
はっきりしているのは、このまま進めば強権管理国家が進行することで、
僕らは不断の努力を持って、こうした巧妙な抑圧から身を守り、
この世界に生まれてきた喜びを見失わないように謳歌して生きたい!
僕はそのキーワードこそ、なるべく小さな単位での自立だと思っています。
それを実現するのが自然農と市民活動だと考え、それを実践したいのです。

長くなってしまいましたが、この一週間に多くの人とお会いして、
その繋がりから再確認したことを、ここに書き記しておきました。
長文を読んでくださった方、ありがとうございます。
人々の穏やかな暮らしに、幸多からんことをお祈りします!


タンポポ舎の山崎久隆さんによる著書、
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