最後に「ちんどん」を聴いて

六ヶ月間、KNB放送の番組モニターをやりました。
去年の9月にモニター募集があったとき、
今のマスコミには本当にジャーナリスト精神がないのかどうか、
富山県内でもっとも力のあるKNBのモニターをやれば、
少しは何かがわかるだろうと思って応募したのです。
そして多くのことを学んだ気がします。

10月から毎月、テレビとラジオ合わせて4本の番組が指定され、
それとは別に自分でも1本選択して、合計5本のモニターです。
指定された番組の中には、初めて見るような番組や、
一回限りの特集番組などもあって、まずその多様性に驚きました。
限られた時間帯にどんな番組を流すかといった番組編成は、
放送局の性格を決める、重要な要素のはずですが、
その実、視聴者は自分の好みでしか番組を見ないので、
そうした放送局の取り組みなど、ほとんど知らないのが普通です。

僕は去年の春に、高岡で平和映画祭をやったときに、
木下アナウンサーと少しお話をする機会がありました。
彼は様々な社会問題に対して、自主的に関心を持っている人で、
「放送局では次々に新しいニュースを追うけど、
そのフォローを継続できないのが残念です」とおっしゃった。
そうした気持ちが本当であれば、何らかの形で出てくるはずです。
と思って見ていると、たしかにKNBはいい番組を作っている。
しかも、たとえスポンサーがほとんど付かなくても作っている。

経済的には豊かな富山県で、自殺率が多い問題を取り上げたり、
高岡市の合併後1周年を期に、問題点を洗い出してみたり、
富山の活性化を「再生」としてチェックする番組、
そして富山県下で起きていた泊事件(横浜事件)の真相を求め、
あるいは戦後占領下の富山で進駐軍がやっていたことなど、
感動的な興味深いドキュメンタリーも見せてもらいました。
KNBのアナウンサーがひとり、一年間を通じて、
自然な田舎暮らしを体験報告していたのも嬉しかったです。

そして最後にモニターしたのが、「ちんどん」でした。
これは前後2回に分けたラジオドラマでしたが、
KNBのアナウンス室メンバーが大勢参加した楽しそうな予告で、
僕は勝手に、よくあるアナウンサーの余興的なものだろうと、
さほど期待もしないで聴いたのですが、最初はただおもしろく、
途中から不思議と内容に引き込まれていって、やがて感動して、
1時間がとても短く感じられる幸福を味わったのです。
それは単なる余興ではなく、富山を愛する人たちのドラマでした。

僕らは環境保護の運動や平和活動を通して、
そのもどかしさから、マスコミに不満をぶつけることも多い。
新聞社や放送局が、会社の利益追求に走ることもあるでしょう。
だけどそこに集まっている人たちは、日々のニュースの中で、
僕らと同じように様々なことを感じながら仕事をしている。
そしてどこかで、こうしたいい番組を作っている。
そうした人間への信頼をあらためて思い出したモニターでした。