多様な文化を目指す国際放送

2001年の911事件以来、マスコミの質が問われるようになって、
アメリカでも大手の放送局が、政府寄りのニュースしか流さなくなったり、
小さなニュース専門ラジオ局までが、次々に買収されたりしたようです。
そこで何かおかしいと思ったジャーナリストたちは、海外メディアを使い、
イギリスやフランスのマスコミで、自分たちの主張を述べ始めたのです。
この現象を引き金として、国際的なメディア戦争が始まりました。

それまで世界に向けて情報を流す放送局は、アメリカCNNとイギリスBCC、
だけだったのが、イラン戦争を別の側面からアルジャジーラが放送したことで、
こうした活動は、政治的にも大きな世界戦略の主役に躍り出てきたのです。
その「アルジャジーラ」は、さらに世界戦略として英語放送を世界中に配信し、
中国は国際放送「CCTV」を立ち上げたうえに、その受信網の整備もしている。
そして去年の暮れにはフランスで、その名も「フランス24」と言う、
政府予算による、公共と民間の放送局共作による国際放送が始まっています。

後発の国際放送局は採算的に難しいでしょうが、それはCNNもBCCも同じで、
そこには間違いなく、赤字でも維持される国家戦略の意味合いがあるのです。
すなわち世界中に英米型の文化、考え方、価値観を広める役割を担っていたのです。
そうした価値観の英米支配に対して異を唱えるには、国際放送が有効と判断され、
アラブ文化を中心に多様な価値観を紹介するとして、アルジャジーラが始まり、
中国の立場を世界に知らせる手段として、AA諸国にCCTVが広まっている。
そしてフランスも、独自の文化と多様性の紹介を唱えて活動を始めたのです。

それでは日本はどうなのかと言えば、NHK国際放送に「ワールドTV」があり、
この放送局では、番組の70%が英語(一部字幕)になっているようです。
実はこのNHKワールドTVは、不思議な日本文化に直接触れられると言うことで、
意外な人気があり、さらに軍事力を持たないことで信頼感が大きいとも言われます。
これはBBCがアメリカの大学で、どの国の発言に注目するかを調べたときに、
日本とカナダが一番信頼されていると、数字の上でも出たことで証明されました。

最近の日本はアメリカ追従が目立つようになり、再軍備をしようと準備を進めて、
それでいったいどんな国益があると考えているのか不思議でなりません。
むしろ、せっかく築き上げた世界における信頼を、壊しているばかりです。
世界は信頼がないと何もやっていけない、それを実証したのが去年国連での、
日本の常任理事国入りに対する世界各国の反対だったのではないでしょうか。
美しい日本ではなく、美しい世界を作るべく、情報戦略を持っていただきたい!