クリスマスの外側

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今夜はクリスマスイヴ。
こんな時期に、アイルランドのお話しです。
富山国際大学の高成玲子さんによる国際文化講演で、
「日本とアイルランド~物の怪の国・妖精の国」。

実は富山大学には、ラフカディオ・ハーンの資料を集めた、
「ヘルン文庫」と呼ばれるものがあるそうで、
これがご縁で、ハーンの生誕150年(2000年)や、
没後100年(2004年)の行事が富山でも行われ、
高成さんはそのときに実行委員をされていたそうです。

さてこのハーン、日本では小泉八雲として知られており、
各地に伝わる怪しげな古い民話など集めたことで有名ですが、
彼がどうして、そのような話しに関心を持ったかと言いますと、
元々はヨーロッパ外周のケルト文化に関心を持っていたらしい。
今でこそアイルランド(愛蘭土)がケルトの代名詞ですが、
キリスト教アングロサクソンがヨーロッパを征服する前は、
ドルイドミズナラ)やオークの木に象徴されるような、
広く土に根差した土着文化が存在していたらしいのです。

ロード・オブ・ザ・リングなどの欧米の作品で、
悪に立ち向かう人が手を携えるのが、こうした文化の人々です。
それは日本で「もののけ姫」が受け入れられるのに似ています。
ただ日本の文学において、古い神々の感覚はマイナーですが、
イギリス文学におけるイエイツ、ジョイス等多くのメジャーは、
ほとんどアイルランドケルトに根差しているのが面白い。
さらに世界中の文学事情を見てみても、似た傾向があって、
各地の土着文化に深く根を張るものが高く評価されている。

こうした外側に追いやられた土着文化に共通した特徴は、
ケルトにしても日本神道にしても、チベットやラダック、
あるいはインカやマヤ、その他世界の多くの原住民族の文化は、
原則的に穏やかで、大自然を崇め、受容性に富んでいた。
これが今、一神教の対立に苦しむ人々の救いに見えている。

世界を席巻したキリスト教を母体とする一神教の人々は、
その信仰の力で、穏やかな土着民族を蹴散らしてきたけれど、
お互いの唯一の神が対立すると、身動きが出来なくなってしまう。
ところが元々大自然の神々と共に生きてきたケルト神道は、
争いごとは下手でも、多くの神々と手を携えることが出来る。
こうしたことが、未来の世界には大切な要素になってくるのです。

キリスト教と科学文明やマネー経済は、世界を狭くしましたが、
この狭くなった世界はあらためて、古代から続く神々に回帰する。
それが世界平和への大きな道筋かも知れないなあと、
2006年のクリスマスイブに、そんなことを考えました。