夢のような

イメージ 1

この写真は、もう何年前になるのだろう。
このころ僕は毎年秋から冬に東京で働いて、
春から夏は沖縄の石垣島で過ごしていた。
それ以上に望むものなど何もなかったし、
魅せられた美しい珊瑚礁が広がる海の近くで、
知り合った仲間たちと海に出掛ける毎日を過ごす、
これがまばゆいほどの奇蹟だとも知っていた。

この写真に写っている人たちのほとんどは、
この宿で知り合っただけの行きずりの人。
それでも本音で人生を語り合っていた記憶がある。
高卒で一度働いたあと医者になる決心をした、
彼は東北で医者になったと聞いている。
失恋の痛手を癒しに来た早稲田の学生は、
その後どうしたかなんて何も知らない。

韓国籍のために様々なつまずきをして、
深く傷ついて島へ流れてきた人もいたけど、
彼は一週間ほどの滞在で明るくなって帰った。
来たときは摂食障害で痩せていた女性も、
ここで一緒に過ごしているうちに元気になった。
何もかもが突き抜けてしまうような美しさ。
その中に自分も存在することの喜び。

あぁ、夢のような時間を生きた記憶がある。
二度と取り返せない奇蹟の時間は過ぎ去った。
いいや驚いたことに、この時間は今もある。
忘れてしまった人はあまりにも多いとしても、
命ある僕らはいつだって自由でしかない。
そうだ、夢の時間は何かを手に入れた時じゃなく、
何かを捨てることが出来たとき静かに訪れる。