井波風

今日は朝早くから凄まじい風が吹いている。
空には渡る風の音がヒューヒューと鳴って、
家の表で裏でギシギシと建物の拉ぐ音がする。
それでも用事があったので昼には出掛けたけど、
砺波では雨ばかりで強い風は吹いていなかった。
どうやら今日の風は、井波風だったらしい。

昔からこの地方では春先に強い南風が吹く。
この風によって町が大火に見舞われた事もあり、
人々は「井波風」と呼んで注意を促している。
この町のすぐ裏手に見える八乙女山には、
風神の神様を祭った洞窟も大切にされている。
まだ花粉症など気にしていなかった子供の頃、
この風に乗って飛び歩くのが大好きだった。

季節感というのは土地ごとにあるのだろう。
僕の住むところでは、この井波風が吹いて後、
まもなく一気に桜が咲いて爛漫の春になる。
今年もまたそんな季節なんだなあと思いながら、
あわただしく過ぎゆく季節の風にくしゃみする。
狂った笛のように鳴り響く空の風音を聞いて、
この春の嵐も大切な町の風情に思えてくる。

この国の様子は、半世紀に大きく変化して、
人々に暮らしぶりも目に見えて変わってきた。
その変化は、人々を幸せにしてきたのかどうか、
取り返しがつかなくなる前に、考えてみたい。
そう思って、この一ヶ月間突っ走っていると、
不思議と父母が生きていた頃のことを思い出す。
父母は、今の僕をどう思って見るだろうか?