臨死体験

毎年4月4日になると、
高2の春に味わった臨死体験を思い出す。
高校生活に抱いていた夢がすっかり色あせた冬に、
様々なことが重なって生きる気力をなくしていた。
そんな状態で春休みが始まって、
新学期が近付くと食欲もなくなって、
何日も食事が出来ない状態になっていた。

そして新学期の前日だったと思う。
眠れなくても起きる気力もなく、
寝床の中でぼんやり横になっていたとき、
突然自分の意識が自分の体から抜け出した。
そのまま遠くへ行きたいと思ったら、
瞬時に僕の意識は体を離れて遠のいた。

もっと遠くへ、さらに遠くへと望むままに、
家の二階窓からサッと外へ抜け出すと、
自分の家を遥か下に見て、さらに遠く、
生まれ育った街並みも遠くなって、
やがて青い星の姿が見えたと思ったら、
さらに遠く、地球から遠ざかるのがわかった。
そのとき突然に、イヤだ!と思った。

この星の上で生きていろんな事をやりたい。
生きたい!と強く思ったその瞬間に、
僕の意識は自分の体にストンと落ちた。
金縛り状態でもがき苦しみ、
やがて解かれて全身に冷や汗をかいて目が覚めた。
それ以来、僕は自由に生きることを知った。
その臨死体験の日が4月4日だったので、
毎年この日になると思い出す。