戻る場所はありますか?

第18回東京国際映画祭コンペティション部門で、
雪に願うこと」が東京サクラグランプリを受賞。
同時に監督賞(根岸吉太郎)、最優秀男優賞(佐藤浩市)、
そして観客賞まで日本映画では初の4冠を獲得した。
どんな映画か見てみたいのはもちろんだけど、
この映画のテーマと、出演者のコメントも興味深かった。

「すべてを失った時、あなたに、戻る場所はありますか?」
これが「雪に願うこと」のテーマだそうだ。
そして映画祭の公式会見で出演者の答えはこうだった。

受賞した佐藤浩市は「帰る所はいらない」と答え、
弟役の伊勢谷友介は「母親ですかね」。そして吹石一恵は、
「いつか戻りたくなるような家庭を作る夢は持っている」。
そんななかで最も注目されたのが、小泉今日子で、
「一人で生きていく覚悟はもう、とうにできています」。
彼女は離婚してからずっと浮いた噂もない人なので、
こうした発言はインパクトがあったようだ。

家族の魅力、家族の大切さがこの映画のテーマでもあるのに、
主要な出演者は帰る場所も求めず一人で生きていこうとする。
これが現代だと言えば、たしかにそうなのだろうが、
人はやはり人生を賭けて帰る場所(古里)を作るのだと思う。
たとえ僕自身がそれに失敗してすべてを失うとしても、
ほかに、それ以上に価値のあることなどないと思うからだ